現在、日本の全人口の約2人に1人が何らかのアレルギーの病気を持っていて、急速にその数が増加しています。年齢別では、特に若年者に多い傾向がみられます。
アレルギーとはそもそも何か?私たちの体には、細菌やウイルス、食べ物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくると、それを異物として認識し排除しようとする仕組みがあります。これは正常な免疫反応ですが、異物に対し過剰に反応を示し、自分の体を傷つけてしまうのがアレルギー反応です。
アレルギーの病気は乳幼児期からのアトピー性皮膚炎を始まりとし、それから食物アレルギー、気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎(花粉症)へと進行することが多く、これをアレルギーマーチと呼んでいます。このアレルギーマーチの始まりや進行を、いかに早く止めるかがアレルギー診療においては重要であり、早期の診断・治療が必要です。
アレルギーは生活の質を著しく低下させ、日常生活においてつらい思いをされている方が多いと思います。また、遺伝的な要因も関与すると言われ、自分の子どもがアレルギーではないかと心配されている方もおられると思います。
アレルギーでお困り・お悩みの方は早めにご相談ください。アレルギーの治療には根気強さが必要であり、1人ではなかなか乗り越えられない場合があると思います。患者様がなるべく乗り越えやすい道を一緒に考え、日常生活をより快適に過ごせるように、全力でサポートします。
かゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で、多くは乳幼児期から発症します。乳児は頭や顔、首に湿疹ができることが多く、幼児・学童になると首まわりやお尻、肘の内側や膝裏に多くみられます。
問診や検査結果から総合的に診断を行いますが、参考として以下の診断基準があります。
(The U.K. Working Partyの診断基準)
血液検査ではTARCという項目を測定することで、現在の皮膚炎の状態をチェックできます。また、アトピーはダニやペットなどの接触により悪化することがあり、血液検査でダニやペットなどに対する特異的IgE抗体価を調べることで、自分のアトピーを悪化させる要因について把握することができます。
治療は①スキンケア、②薬物療法、③悪化要因の対策、の3つからなり、どれも重要です。
アトピーの治療は他のアレルギーの病気と比べても特に労力と時間を費やし、根気強さが求められます。そのため、途中で断念してしまう方もおられます。乳幼児期から早く治療を行い、皮膚をキレイに保つことで、その後のアレルギーマーチの進行を防ぐこともできます。諦めずに一緒に乗り越えていきましょう。
普段何気なく食べている食べ物ですが、食物アレルギーではその食べ物が体の中で異物として認識され、それを排除しようと過剰な免疫反応が働きます。その結果、じんましんや咳、嘔吐などの症状が起こります。場合によっては血圧の低下や意識障害(アナフィラキシーショック)を引き起こしてしまう怖い病気です。
体の中で異物として認識する働きを感作と呼び、感作によって食物アレルギーの発症へとつながります。感作の原因は色々とあり、まだ分かっていないこともありますが、乳幼児期では湿疹のある皮膚から感作されることが分かっています。家の中には食べ物のかけらがホコリに紛れて至る所に落ちており、それが湿疹のある皮膚に触れると感作が成立するという仕組みです。このことから、乳幼児期から皮膚をいつもキレイに保つことが食物アレルギーを予防する上で重要であることが分かります。
問診や血液検査(食物に対する特異的IgE抗体価)などから食物アレルギーを疑い、最終的な診断確定のために食物経口負荷試験(実際に食べてみて症状が出るかを確認する検査)を行います。アナフィラキシーなどのリスクが高い方は、連携している医療機関に紹介し、検査を行います。
食物アレルギーと診断されれば、昔は原因食物を完全除去し年齢とともに自然に治るのを待つのが主流でしたが、現在は必要最低限の除去を基本とし、食べられる量の範囲内で定期的に食べ続けていくことが栄養面、さらには治療においても重要となっています。筋トレで例えると、最初に重さ50kgのバーベルを持ち上げられなかったとしても、週に数回ジムに通いバーベルトレーニングを続けていくうちに、50kgのバーベルを持ち上げられるようになるのとイメージは一緒です。定期的に原因食物を食べ続け、体に慣れさせていきます。しかし、自宅で原因食物を食べることはリスクが伴います。自宅で安全に食べられる量をこちらで決定し、無理のない食べ方を一緒に考えていきましょう。
原因食物を食べアナフィラキシーを起こす危険性が高い患者様に対してはアドレナリン自己注射液(エピペン®)を処方します。処方の際に注射の打ち方を指導します。
体の空気の通り道である気管支が慢性的に炎症を起こし、その結果、気管支が狭くなり「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった症状や呼吸が苦しくなる病気です。風邪などの感染症やダニ・ハウスダスト、ペット、喫煙などが悪化要因となります。ぜん息の多くは乳幼児期に発症し、学童までに治りますが、一部は成人まで持ち越します。昔と比べ、ぜん息で亡くなる方は少なくなっていますが、依然として亡くなることもある、怖い病気です。
問診にて、これまで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった症状が繰り返し起きている場合はぜん息を疑います。しかし乳幼児ではぜん息以外でもこれらの症状が起きることもあり、診断が難しい場合があります。検査としては呼吸機能検査があり、診断およびぜん息のコントロール状態を把握する上で有用です。その他、血液検査でダニ・ハウスダスト、ペットなどに対する特異的IgE抗体価を調べることでぜん息の悪化要因を把握することができます。
ぜん息の治療は①発作の時の治療、②発作を予防するための治療、の2つに分けられます。
その他、ダニなどの悪化要因への対策や、適度な運動による体力作りもぜん息治療において大切です。
ぜん息の患者様には日々の体調や発作の程度・頻度、ピークフローメーター(息を吐く力をみる簡単な道具)の数値などを日記に付けてもらい、これを元にぜん息の日々のコントロール状態をチェックします。発作の頻度が多ければ長期管理薬の見直しが必要となります。
発作がない時はどうしても治療がサボりがちになってしまうのですが、発作のない時の治療(長期管理薬)こそが重要なのです。サボりそうになった時は正直に教えてください。全力でサポートします。
花粉やダニ、ペットなどの原因物質が鼻の粘膜から体内に侵入し、免疫反応により鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が起こります。アレルギー性鼻炎は通年性(一年中症状が出るタイプ)と季節性(特定の季節に症状が出るタイプ)に大きく分けられ、通年性はダニやペット、季節性はスギやヒノキなどの花粉が原因となります。近年、スギ花粉飛散量の増加により、スギ花粉症の患者数は増えており、小さな子どもから大人まで発症する可能性があります。
問診で典型的な症状(鼻水・鼻づまり・くしゃみ)があり、症状の出やすい状況・時期などからアレルギー性鼻炎を疑い、血液検査で花粉やダニなどに対する特異的IgE抗体価が陽性であれば診断確定となります。
まずは原因物質の除去を行います。具体的にはダニの対策(部屋の掃除や寝具の洗濯など)や花粉飛散時期のマスク・ゴーグルの着用などが挙げられます。
薬物療法には抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬などがあります。花粉症の方は花粉飛散時期の少し前から始めることをオススメします。
アレルギー性鼻炎を根本的に治す治療法として、アレルゲン免疫療法があります。原因物質を少しずつ体内に入れることで、体が慣れていき症状が出にくくなります。注射で入れる皮下免疫療法と舌の下に入れる舌下免疫療法の2種類がありますが、当院では舌下免疫療法を行っています。現在、ダニまたはスギによるアレルギー性鼻炎に対し適応があり、毎日1日1回、薬を服用します。速効性はなく3〜5年間の継続服用が必要ですが、薬物療法であまり効果のない方や薬の量を減らしたいという方にオススメです。概ね5歳以上のお子さんから行える治療法であり、学校受験を控えるお子さんにもオススメします。
その他の治療として、耳鼻科でのレーザー手術などもあります。
子どもから大人まで、鼻炎でお困りの方は多いですが、個人それぞれに合った治療法を提案いたします。
よくお尋ねされる質問に対してお答えします。